今までレガシィのラインナップに3.0Rのようなクルマがなかったんだよね。気品があって、でもどこかワル。
軽量・コンパクト・低重心、そして完全バランスというフラット6のメリットを生かし、静かで滑らかな吹け上がりを見せるエンジン。
直噴エンジンの低回転トルクの薄さにガッカリさせられたA3だが、いっぽうで新トランスミッション“DSG”が生み出す新鮮なフィーリングには驚嘆した。
「スバルは、プレミアムを語る素質を手に入れたナ」。リニューアルしたボクサー6搭載の3.0R試乗直後の感想だ。
スムーズでレブリミットまでまったくといっていいほど振動がないエンジン。先代モデルに搭載されていた6気筒と比べるとパワー感もトルク感もグッと明瞭。
2ボックスカーというと華奢なイメージを持ちがちだが、A3には貧弱さがまったくない。まるで高級セダンに乗っているような乗り味がある。
大幅な軽量化を施されたボディを持つ新しいレガシィであるが、ハンドリングに効くところは重量増になってもよいものを求めた点は、ドライビングを中心に考えるスバルらしさだ。
新しくなったA3は初代の地味なスタイルから一転強そうに見えるようになった。室内はアウディらしい質感の高さは感じられるがやや保守的。
新型A3は随所に重厚感を感じることができ、2代目にして貫禄すら感じられる中身の熟成ぶりと落ち着きのあるスポーティさが印象的。
快適装備も安全装備も、必要なものはぜんぶ揃っているが、余計なものはついていない。「スタンダード」という言葉を想起させる爽やかな実用ハッチだ。
もちろん技術的な成果としては素晴らしい。4気筒とほとんど変わらぬサイズにロッパツを詰め込んだ凝縮のセンスなど、まさに小さな宇宙と呼びたい。
基本メカを共用する新世代ゴルフに対し、まず3ドアから輸入発売するなど意識的にスポーティ風味を強調するが、けっして熱さをひけらかさないのがニクい。
時間の問題だ。アウディがカーメーカーを超越してアルマーニのような名ファッションブランドになるのか。このA3を見てそう思った。
この進化は見事。日本でスポーツセダン(&ワゴン)のスタンダードを塗り替えたレガシィが、今度は世界のスタンダードを狙うようだ。
今まで日本車は何度もヨーロッパのメーカーに勝負を挑んできたけれど、正面からぶつかって勝てるモデルとなると難しかった。