水素社会に向けての実証実験プラント、神戸で稼働中[フォトレポート]

神戸液化水素荷役実証ターミナル
  • 神戸液化水素荷役実証ターミナル
  • すいそふろんてぃあ
  • 富士24時間レースを走るORC ROOKIE Corolla H2 concept
  • 神戸水素発電所
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川崎重工業、岩谷産業、電源開発などの「CO2フリー水素サプライチェーン推進機構(HySTRA)」は14日、同機構が実証実験を行っている神戸市の海上輸送基地などをメディア向けに紹介した。

水素は国内でも製造が可能だが、将来的に市販車や産業用に対してより多くの水素が必要になったときに国内だけでは賄いきれないことも想像できる。その際には海外から運んでくる必要もあるわけだが、水素を海外で製造し輸送してくる実証実験を、川崎重工や岩谷産業、電源開発など国内8企業が連携して行っている。その基地や輸送船をCO2フリー水素サプライチェーン推進機構 (HySTRA)と共に、トヨタ自動車もメディア向けにプレゼンテーションを行った。

CO2フリー水素サプライチェーン推進機構(HySTRA)は、川崎重工・岩谷産業・シェルジャパン・電源開発・丸紅・ENEOS・川崎汽船の8社からなり、オーストラリアのラドローブバレーにある褐炭炭鉱から産出される褐炭から水素を作り出し、液化水素の状態にして専用船で輸送し、神戸にあるターミナルで荷役し、国内向けに送り出すと言う実証実験を行っている。市場に水素を供給していないが、将来的どのようなシステムや技術、装置などが必要なのかの実証実験だ。

褐炭とは世界的に広く分布しているが、水分量が50~60%と多く、乾燥すると自然発火しやすく輸送が困難であり、採炭地での発電にしか活用されていない。実証実験ために提携するオーストラリア・ラドローブバレーの褐炭炭鉱では日本の総発電量の240年分に相当する褐炭があるという。実証実験では現地で褐炭から水素を作り出し、輸送しやすいように液化水素に変換。その後専用船で輸送すると言う。

神戸空港のある神戸空港島の一部にHySTRAが実証実験をしている「神戸液化水素荷役実証ターミナル」がある。2500立方メートルの液化水素貯蔵タンクが設置され、その横には液化水素運搬船の「すいそ ふろんてぃあ」が接岸しており、船内には1250立方メートルが貯蔵できる液化水素タンクを装備している。船内と陸上設備はフレキシブルホースタイプのローディングシステムで繋がり、液化水素を搬入搬出している。

巨大なタンクは2500立方メートルの液化水素を貯蔵でき、その量は、トヨタが市販している燃料電池車の『MIRAI』では5.6kgの水素を搭載できるので、およそ3万台分で使える量の液化水素を貯蔵できるというから、いかに大きいかが想像できる。

現状ではトラックに水素タンクを搭載し移動させるしか手段はないが、将来的には荷役ターミナルの横に発電所を設置し、輸送の手間をかけず発電できるようなシステムが望ましいと言う。

その発電に関しては神戸ポートアイランドにて、水素ガスタービンコージェネレーション実証を行っている。ここでは水素と天然ガスを燃料とした1MW級ガスタービン発電設備を用いて、電気、熱、水素を地域に供給して利用する技術開発と実証を行っている。現在も地域の病院やスポーツセンター、国際展示場や神戸新交通の通常電源として供給する実験も行われている。

その1MW級のガスタービンでは、天然ガスと水素を混合して燃焼する方法から、天然ガスのみ、水素のみなど様々な混合比での燃焼実験も行っており、水素だけでも十分に発電できることも実証済みだという。2030年までに商用化や大量輸送、大量供給ができるようにしていくのがHySTRAの目標だと言う。

トヨタは現在スーパー耐久シリーズのレースで、「ORC ROOKIE Corolla H2 concept」を走らせて、水素エンジンの可能性を探っている。今週末の9月19~20日鈴鹿サーキットで開催される、スーパー耐久シリーズ2021 Powered by Hankook 第5戦 SUZUKA S耐にも参戦する。「水素カローラ」は徐々に戦闘力をあげており、将来のモビリティの一端となりうる水素エンジンを搭載するカローラの走りにも注目したい。

《雪岡直樹》

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