BEV時代でもディーゼル車は「優れた選択肢」に…マツダのディーゼルなぜ人気? その秘密を探る

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ディーゼルエンジンを搭載するマツダの代表的SUVでショートトリップ。人気の秘密はどこにあるのか?
  • ディーゼルエンジンを搭載するマツダの代表的SUVでショートトリップ。人気の秘密はどこにあるのか?
  • マツダ CX-60 XD-HYBRID(手前)とCX-5 XD ブラックエディション(奥)
  • マツダ CX-60 XD-HYBRID
  • マツダ CX-5 XD ブラックエディション
  • マツダ CX-60 XD-HYBRIDに搭載される3.3リットル直6ターボディーゼル「SKYAKTIV-D」エンジン
  • マツダ CX-5 XD に搭載される2.2リットル直4ターボディーゼル「SKYAKTIV-D」エンジン
  • マツダ CX-60 XD-HYBRID
  • マツダ CX-60 XD-HYBRID(手前)とCX-5 XD ブラックエディション(奥)

パワートレインを縦置きとすることで大排気量エンジンの搭載を可能にしたマツダのラージ商品群。

その第1弾として登場した『CX-60』は、直列6気筒ターボディーゼルエンジンに48Vマイルドハイブリッド・システムを組み合わせた「XD-HYBRID」を筆頭に、XD-HYBRIDからマイルドハイブリッド・システムを省いたディーゼルモデルの「XD」、直列4気筒ガソリンエンジンにプラグインハイブリッド・システムを組み合わせた「PHEV」、そして直列4気筒ガソリンエンジンを搭載する「25S」の4タイプを用意しているが、予約注文開始から2か月半でなんと8726台を受注したという。しかも、導入から2023年9月までの販売のうち、約8割がディーゼルエンジンを積むXD-HYBRIDとXDで占められたというから驚く。

ディーゼルモデルの人気の秘密はどこにあるのか?

その答えを探るため、我々は最新のディーゼルエンジンを積む「CX-60 XD-HYBRID プレミアムモダン」と、今や日本を含めたグローバルでマツダの主力モデルとなった『CX-5』の直列4気筒ターボディーゼルエンジンを搭載する「CX-5 XD ブラックトーンエディション」を連ね、房総半島を巡るショートトリップに出かけてみることにした。

◆「新世代のディーゼル」が肌で感じられるCX-60

マツダ CX-60 XD-HYBRIDに搭載される3.3リットル直6ターボディーゼル「SKYAKTIV-D」エンジンマツダ CX-60 XD-HYBRIDに搭載される3.3リットル直6ターボディーゼル「SKYAKTIV-D」エンジン

まずはCX-60のステアリングを握る。

マイルドハイブリッドを備えた試乗車は、通常のセルモーターよりもはるかに強力なハイブリッド用モーターでエンジンを始動させるため、ディーゼルモデルでお馴染みの「エンジンを掛けるときの“身震い”」をほとんど感じさせることなく、スムーズに始動する。この一事だけでも、「ああ、新世代のディーゼルモデルに乗っているなあ」と実感するはずだ。

走行時にエンジンが発するノイズやバイブレーションも、かつてのディーゼルエンジンに比べればはるかに穏やかで、特に巡航時であればまったく気にならないレベル。また、追い越し加速などで高回転域や高負荷領域を使っても、エンジン音はうまくおさえこまれているうえ、その音質にも安っぽさはまるで感じられなかった。プレミアムカーに相応しい上質さだ。

スロットル操作に対するレスポンスが良好で、エンジン回転数がスムーズに高まっていくところも、この3.3リットル・直列6気筒ディーゼルエンジンの魅力。「人馬一体」を掲げ人間中心のクルマづくりをおこなうマツダだけに、人の動きにあったレスポンスを重視しているのがアクセルペダルからも伝わってくる。

マツダ CX-60 XD-HYBRIDマツダ CX-60 XD-HYBRID

ノーマルモードでも大柄なCX-60をストレスなく加速させるには必要十分なパワーがある。そして、ドライブモードをスポーツに切り替えれば、スロットルペダルを踏み込んだ瞬時にディーゼル大トルクを生み出す、アグレッシブなキャラクターへと一変する。そのパワフルで俊敏な走りには、きっと目を見張らされることだろう。

乗り心地は、サスペンションがしっかりと踏ん張ってボディを安定した姿勢に保ってくれるタイプ。ただし、ダンパーの動きがスムーズなので快適性は高い。CX-60のサスペンションで注目すべきは、通常は主にスプリングやダンパーのセッティングによって生み出すフラット感を、いわばサスペンション・ジオメトリーで実現している点にある。このため、どんな状況でも不快なピッチングは無視できるレベルに抑え込まれており、おかげでハンドリングは正確かつ俊敏そのもの。今回、タイトなワインディングロードでもストレスを感じることなく走り抜けられたのは、ラージ商品群で新たに紹介されたこのサスペンションの恩恵といって間違いない。

◆トルク感ではCX-60をも凌ぐ? CX-5はバランスの良さが光る

マツダ CX-5 XD ブラックエディションマツダ CX-5 XD ブラックエディション

もう1台のCX-5も快適性は高く、とりわけキャビンの静粛性はCX-60にも匹敵するほど。搭載されるエンジンは排気量2.2リットルの4気筒となるが、こちらは200kgほど車重が軽いこともあって、動力性能にも不満は覚えなかった。むしろ、スロットルペダルを踏み込んだ直後のトルク感は、CX-60をわずかにしのぐと思ったくらいだ。

いっぽう、うねった路面でのボディの動き方はCX-60とは異なり、一般的なモデルに近い。それでもソフトさとフラット感をほどよくバランスさせた味付けは魅力的。ハンドリングにCX-60ほどの機敏さは感じられなかったものの、こちらは全長、全幅、全高がいずれもひとまわりコンパクトなため、同じくタイトなワインディングロードを走っても不便は感じなかった。

ただし、2台を何度か乗り比べるうち、CX-60のなんともいえない上質感に惹かれるようになっていった。その理由がなんなのか、初めのうちは判然としなかったのだが、あるとき、ふとした拍子に気付いた。

FFのCX-5(左)とFRのCX-60(右)で大きく異なるのはボンネットの長さFFのCX-5(左)とFRのCX-60(右)で大きく異なるのはボンネットの長さ

ステアリングから伝わるバイブレーションのレベルが、大きく異なっていたのだ。

誤解のないように付け加えておくと、CX-5の振動が過大なわけでは決してない。そのことは、私自身、CX-60のほうが上質に感じられる理由を直ちに突き止められなかったことからもおわかりいただけるだろう。けれども、自動車評論家としてのセンサーをフル動員すると、CX-5のステアリングから感じられた細かな、そしてごく小さなバイブレーションが、CX-60ではほぼ完全に消え去っていることに気付いたのである。まさに、プレミアムモデルの証といっていいだろう。

◆燃費がいい=CO2排出量が少ない、マツダがディーゼルに熱心な理由

マツダ CX-60 XD-HYBRIDマツダ CX-60 XD-HYBRID

驚くべきことに、燃費もCX-60のほうが10~20%ほど良好だった。これぞラージ商品群が導入された理由でもあるのだが、マツダによると、小排気量エンジンのパワーを目一杯使うよりも、大排気量エンジンをユルユルと使ったほうが熱効率は高いのだそうだ。

事実、CX-60 XD-HYBRIDは高速道路で26km/リットルを越えることがあったほか、一般道でも20km/リットルを下回ることは滅多になかった。車重が1900kgを越えるモデルとしては、驚異の低燃費といえる。

一般的に、ディーゼルエンジンはガソリンエンジンに比べて燃費が30%ほど良好とされる。その主な理由は、燃焼室内の圧力がもっとも高くなる直前に点火プラグで着火させるガソリンエンジンに比べると、燃焼室内の圧力がもっとも高まった瞬間に燃料を噴射して着火させる(ことが理論的に可能な)ディーゼルエンジンのほうが熱効率は高いことにある。

マツダ CX-60 XD-HYBRIDマツダ CX-60 XD-HYBRID

しかも、マツダはディーゼルエンジンとしては比較的低い14~15の圧縮比を採用。こうすることで、上死点(=燃焼室圧力がもっとも高い状態)付近で点火させてもNOxが発生しにくい燃焼を実現すると同時に、熱効率の改善も図ることができたという。

いっぽうで、燃費がよければ必然的にCO2の排出量も減るから、ディーゼルモデルは環境に優しいことになる。実は、マツダがディーゼルモデルの開発に熱心に取り組んでいる理由も、ここにもある。

◆BEV時代でもディーゼルモデルは「優れた選択肢」となる

大谷達也氏大谷達也氏

世の中は電気自動車(BEV)に向けてまっしぐらに突き進んでいる印象を受ける。将来的にはBEVが大多数を占める時代がやってくるだろう。しかし、BEV以外の販売が禁止されたからといってエンジン車が路上からただちに消え去るわけでもない。つまり、エンジン車が走り続ける時代は当面続くわけで、そういったことを考えても、少しでもCO2排出量が少ないクルマを選ぶことが地球温暖化現象を抑制するうえでは効果的なのだ。

そのエンジン車の可能性のひとつが合成燃料だ。欧州議会が2035年にエンジン車の販売を実質的に禁止する法案を検討していたが、その後、合成燃料(eフューエル)を使用するエンジン車については販売を認めることを決定した。マツダはこの合成燃料に対応したエンジンの開発に早期から積極的に取り組むブランドのひとつで、次世代バイオ燃料で走るディーゼルモデルでレースにも参戦している。もともと燃費が良く、CO2排出量の少ないディーゼルエンジンで、さらに燃料(軽油)を合成燃料に置き換えることができれば、BEVでなくともカーボンニュートラルに大きく貢献できるのだ。

BEV普及の課題として挙げられるのが充電インフラの拡充や、再生可能エネルギーによる発電だが、合成燃料であれば既存のインフラ(ガソリンスタンド)を大きく変えることなく活用できることもメリットだ。日本でも合成燃料の普及が進んでいけば、ディーゼルモデルの魅力はさらに増すことだろう。

しかも、燃費がよくて燃料代も安いディーゼルモデルであれば、環境だけでなくあなたのおサイフにも優しいはず。今回取り上げたCX-60、CX-5だけでなく、コンパクトカーからミドルクラスセダン/ワゴンまで幅広くディーゼルエンジン搭載車を用意するマツダのラインアップは、間違いなく優れた選択肢のひとつとなるだろう。

ディーゼルエンジンを搭載するマツダの代表的SUVでショートトリップディーゼルエンジンを搭載するマツダの代表的SUVでショートトリップ MAZDA CX-60 詳細はこちら

大谷達也|自動車ライター
元電気系エンジニアという経歴を持つせいか、最近は次世代エコカーとスーパースポーツカーという両極端なクルマを取材す ることが多い。いっぽうで「正確な知識に基づき、難しい話を平易な言葉で説明する」が執筆活動のテーマでもある。以前はCAR GRAPHIC編集部に20年間勤務し、副編集長を務めた。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本モータースポーツ記者会会長。

《大谷達也》

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