ドイツの史実から見たフェルディナント・ポルシェの生涯とは

ポルシェ356(東京モーターショー)
  • ポルシェ356(東京モーターショー)
  • フェルディナント・ポルシェ博士
  • フォルクスワーゲンW30、のちのビートルのプロトタイプ
  • ポルシェの生涯[改訂版]

『ポルシェの生涯 [改訂版]』
その時代とクルマ
著者:筑波大学名誉教授 三石善吉
発行:グランプリ出版
定価:3080円
ISBN978-4-87687-407-1

時代に翻弄されながらも、自動車工学者として多くのクルマを生んだフェルディナント・ポルシェの生涯を、ドイツの政治学の専門家が紹介。

自動車の発展期に生きた偉大な自動車設計者であるフェルディナント・ポルシェ。絶対的なスピードへの挑戦と安価で高性能な大衆車の実現という“夢”を持ち、ローナー・ポルシェからVW『タイプ1(ビートル)』まで多くのクルマを生み出し、ポルシェ『356』誕生へと導いた。

本書では国内外の学術論文や文献をベースとして、ナチス政権に翻弄されながらも一人の自動車工学者としてフェルディナント・ポルシェの辿った生涯を紹介する。

フェルディナント・ポルシェをつづった書籍は数多くある。しかし、本書の最大の特徴はドイツの政治学の専門家がその人生を紐解く点にある。従って工学博士としてフェルディナント・ポルシェが手掛けたエンジニアリング的視点は物足りなく感じる向きもあるかもしれない。

フォルクスワーゲンW30、のちのビートルのプロトタイプフォルクスワーゲンW30、のちのビートルのプロトタイプ

しかし、その時代背景やそこに絡んでくる人々を克明に記すことで、フェルディナント・ポルシェがいつ、なぜ、何をしたのかを浮き彫りにしている点は希少だ。当然ドイツといえばアウトバーンを思い浮かべるが、どのように発想され、着工に至ったのかまで深堀されているので、フェルディナント・ポルシェが生きた時代のドイツ帝国の様相が俯瞰できて興味深く読み進めることができるだろう。

いずれにせよ、単にクルマやフェルディナント・ポルシェだけでなく、取り巻く人々や社会情勢にまで言及している良書といえる。

なお本書は2008年10月刊行の同書の、記載内容の再確認を実施して、写真資料を追加するとともに、カバーデザインを一新して刊行する新訂版である。

フェルディナント・ポルシェ博士フェルディナント・ポルシェ博士
ポルシェの生涯[改訂版]ポルシェの生涯[改訂版]
《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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