無人自動運転車が公道を走る未来…自動運転レベル4と新型車両『MiCa』の発表【MaaSの現場】

自動運転レベル4とは

東京大学柏キャンパスでの報道発表

新型車両「MiCa」の試乗体験

「MiCa」日本仕様の特長

「Dispatcher」ネイティブ

自動運転車の新たな展開

自動運転レベル4に対応した小型EVバス「MiCa(ミカ)」
  • 自動運転レベル4に対応した小型EVバス「MiCa(ミカ)」
  • 新型車両「MiCa」(左)と「NAVYA ARMA」(右)
  • 東京大学生産技術研究所の中野公彦教授(左から2番目)
  • 障害物(自転車)を自動で回避する「MiCa」
  • 「MiCa」のLiDARセンサー
  • 「MiCa」の前方センサー
  • 完全無人走行中の「MiCa」
  • 車内に設置されたセンシングモニター

今回は、ソフトバンクの子会社であるBOLDLYが、エストニア共和国の自動運転車メーカーAuve Techと提携し開発した自動運転レベル4に対応する小型EVバス『MiCa(ミカ)』の報道向け試乗会に参加してきた。

今年4月に施行された改正道路交通法により、限定的な領域での「完全無人運転」が可能となった。このバスはその実現に向けた重要な取り組みの1つとなる。

自動運転レベル4とは

自動運転レベル4は、2023年4月に施行された改正道路交通法において「特定自動運行」と定義される。この法改正により、過疎地域で特定のルートを無人バスが運行することが想定されているが、将来的には高速道路での自家用車・トラックなどにも拡大される予定だ。自動運転レベル4の車両が公道を運行する全国初の例は福井県永平寺町で、 ここでは7人乗りの電動カート(グリーンスローモビリティ)に自動運行装置(ZEN drive Pilot Level 4)を装備した3台の車両が運行されている。

BOLDLYは、ソフトバンクと先進モビリティ(東大発ベンチャー)の合弁会社で、自動運転などを活用した持続可能な公共交通の実現に向けて取り組んでいる。これまでに国内外で合計120回以上の実証実験を実施し、すでに2カ所(茨城県境町の公道と東京の羽田空港関連敷地内)で自動運転バスを運行中だ。いずれも自動運転レベル3に対応したバス『NAVYA ARMA』を運行しており、運行管理プラットフォームに「Dispatcher」を導入している。

新型車両「MiCa」(左)と「NAVYA ARMA」(右)

東京大学柏キャンパスでの報道発表

東京大学生産技術研究所とBOLDLYは自動運転について共同研究を行っており、今回の試乗会は東京大学柏キャンパス生産技術研究所「ITS R&R実験フィールド」で行われた。この施設では、鉄道試験線、走行試験走路、交通信号機、踏切などがあり、大型車用ドライビングシミュレータ等など実スケールでの実験が可能な研究設備だ。東京大学の中野公彦教授からは、2008年の隊列走行の研究から始まり、2017年ごろから本格的に開始した自動運転の研究、2019年の公道走行の開始など経緯が説明された。

東京大学生産技術研究所の中野公彦教授(左から2番目)

また、今回初披露となる新型のEV小型バスMiCaに加えて、自動運転レベル3対応の車両NAVYA ARMAもこのフィールド内で走行する。自動運転の車両2台が同時に走行し、すれ違うという風景は日本国内ではまだ珍しい光景である。

フランスのNAVYA社が開発した車両NAVYA ARMAは、2015年前後に生産されたもので、すでに5年前になる。その進化形とも言えるのが今回の最新型車両MiCaだ。BOLDLYの佐治友基社長は、この2つの車両の進化をパソコンの進化に例え、格段に性能面で向上していることを説明した。

新型車両『MiCa』の試乗体験

新型車両を目の前にすると、これまでのNAVYA ARMA車両に比べて明らかに小型化されており、洗練されたデザインを持つ印象を受ける。この車両はドライバーレスの自動運転レベル4に対応しているため、運転席は存在せず、乗客はボックスシートに向かい合わせて座ることになる。

試乗時にはスタッフが同乗し、タブレットを用いて自動運転の発車指示などを行っていた。メーカーが発行するオペレーターライセンスが必要という。NAVYA ARMAではこれらの操作をゲームのコントローラーで行っていたが、新型車両ではタブレットが用いられている。自動運転とマニュアル運転の切り替えや、マニュアル運転操作も可能だという。


《坂本貴史》

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