【トヨタ ランドクルーザー250】どんな形でもいいから走り切るという思想

トヨタ・ランドクルーザー250
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トヨタ自動車が8月2日に公開した『ランドクルーザープラド』改め『ランドクルーザー250』。パワーユニットは5種類。


◆5種類のパワーユニット、2種類のAT

ランドクルーザー史上初のストロングハイブリッド、同じエンジンの非ハイブリッド、2.8リットルターボディーゼルのマイルドハイブリッド、同じエンジンの非ハイブリッド、2.7リットル純ガソリンの5種類だ。変速機は最もベーシックな2.7リットルがトルクコンバーター式6速AT、それ以外はトルクコンバーター式8速AT。そして全パワーユニットともプロペラシャフトを介した機械式AWD(4輪駆動)が標準。

新規設計ユニットはストロングハイブリッドに組み合わされる2.4リットル直列4気筒ガソリンターボ「T24A-FTS」。バッテリーとエンジンの双方が同時に出せる合成出力の最大値は243kW(330ps)、最大トルクは630Nm(64.3kgm)と強力だ。

このT24S-FTS、型式としては『クラウンクロスオーバー』、レクサス『NX』、『RX』などに積まれているものと同一だが、パーツの約半分はそれらと異なる新造品であるという。

◆ランドクルーザーはタフネスが第一

「他のモデルがエンジン横置きであるのに対して縦置きという違いがあるのは言うまでもありませんが、それだけではありません。ランドクルーザーはタフネスが第一。過酷な使われ方に耐えられるように設計しました。クランクケースや内部のムービングパーツは先行しているT24Aと同じですが、シリンダーブロックの肉厚を十分に取り、オイルの流量を増やし、冷却性能の増強も図りました」(パワートレイン製品企画部・北井慎也氏)

内燃機関の効率向上を巡って激しい競争が行われている今日では、エネルギー損失の要因であるオイル流量や冷却水循環、クーリングチャンネルへのオイル吐出量などをギリギリまで削るのがセオリーで、乗用車、ミニバン、クロスオーバーSUV向けエンジンはそのように開発されている。が、ランドクルーザー250は車重が重いうえに低回転から高回転までの幅広い領域で負荷の変動が大きい運転が行われるケースが多い。効率を極限まで追求するのではなく、少々内部損失が増えても耐久性の確保を重視した構造にするというのは“ランクル”ならではの特徴といえる。

◆レクサスのクロスオーバーSUVに対して耐久性は2倍以上

肝心の耐久性だが、これについては自動車メーカー各社がそれぞれ基準を設定している。たとえばいすゞ自動車の大型トラック用エンジンの場合は大型車用エンジンで100万マイル(160万km)、ダイハツ工業の軽乗自動車用エンジンがシリンダーヘッドを開ける重整備まで10万マイル(16万km)---といった具合である。

T24A-FTSの場合はどうなのだろうか。トヨタ関係者は具体的な数値については明言を避けつつ「RXやNXなどのクロスオーバーSUVに対して耐久性は2倍以上」と語った。クロスオーバーSUVとクロスカントリー4×4は想定される使用環境がまるで異なるため単純な距離では比較できないが、タフネスについては大いに期待して良さそうだ。

◆どんな形でもいいから走り切る能力

組み合わされるハイブリッドは形式としては他の同エンジンのハイブリッドモデルと同様、駆動用電気モーター兼発電機をエンジンと変速機の間に1基置くパラレルハイブリッドだが、ランクルが特別なのは、後輪軸にも電気モーターを置く電動AWDではなく、プロペラシャフトを介してパワーを後輪に伝える機械式AWDを採用していること。理由はもちろんタフネスさのためだ。

変速機にトルクコンバーターを使用しているのもクラウンクロスオーバー、NXなどのパラレルハイブリッドと異なる部分。「悪路や急勾配、重量物のトーイング(牽引)などで大トルクが必要なさいにトルコンによるトルク増幅で駆動力を稼げるよう、こういう仕様にした」(北井氏)という。

クロスカントリー4×4にとって最も大切なのはどんな形でもいいから走り切る能力。クルマへの環境性能の要求が日増しに厳しくなる中でもなお迂闊にハイブリッド化できなかったゆえんである。そのクロスカントリー4×4のメジャーブランドであるランクル初のストロングハイブリッドがどのような完成度を示すのか、大いに興味がわくところだ。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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