アラフィフ世代に刺さる!? ドゥカティ注目の『デザートX』を解説…パリダカへの憧れを具現化

ドゥカティ デザートX
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2019年の「EICMA」(イタリア・ミラノショー)において、1台のコンセプトモデルがドゥカティのブースに展示されていた。なんの予告も情報もなかったそれが『デザートX』の初期プロトだ。

それから2年後の2021年12月9日、「ドゥカティ・ワールド・プレミア2022」でその市販バージョンが正式に披露され、大きな話題を集めている。

このワールド・プレミアは、2021年9月から始まったウェブ配信による新車発表イベントだ。エピソード1から6までの段階があり、デザートXはそれを締めくくる大トリとして登場。ドゥカティの新境地を開くブランニューモデルとして期待が寄せられている。

砂漠への思いを具現化した注目のブランニューモデル「デザートX」

ドゥカティ デザートXドゥカティ デザートX

注目はそのスタイリングだ。かつての冒険ラリー「パリ・ダカールラリー」が大排気量マシンで争われていた時代を想起させるもので(現在は「ダカールラリー」と名称を変え、排気量は450cc以下)、とりわけアラフィフ世代には刺さる。アドベンチャーと呼ばれるカテゴリーが世界的に流行している今、そうしたモデルの向こうにあの頃憧れた砂漠への思いを馳せているライダーは多い。

もっとも、ドゥカティはラリーに直接参戦していなかったわけだが、当時ドゥカティを傘下に収めていたカジバがエレファントという名のワークスマシンを送り込み、1990年と94年の2度に渡って制覇。そのマシンに搭載されていたエンジンがドゥカティのLツインだったのである。

デザートXのデュアルヘッドライトや背の高いコックピットまわり、燃料タンクからアッパーカウルにかけての造形は当時のラリーマシンを彷彿とさせるもので、プロモーションビデオもデューン(砂丘)を舞台に撮影。白い外装に赤を配したカラーリングも懐かしさをくすぐる。

ドゥカティ デザートXドゥカティ デザートX

デザインは当時を彷彿とさせるが、中身は最新のコンポーネントを搭載

というわけで、おっさんホイホイ的な要素が強いモデルだが、もちろんエンジンにもフレームにも足まわりにも電子制御にも、最新のコンポーネントが採用されている。スチールパイプを組んだトレリスフレームには937ccの水冷Lツインが搭載され、110psの最高出力を発揮。6パターンのライディングモードを備え、トラクションコントロール、ウィリーコントロール、エンジンブレーキコントロール、コーナリングABSといった各種デバイスと連動するなどして、車体のスタビリティが確保されているのだ。

走破性の要となる前後サスペンションには、KYB製のφ46mmの倒立フォークとモノショックが採用され、トラベル量はそれぞれ230mmと220mmとたっぷりとした容量を持つ。そこにオフロード走行に重きを置いたフロント21インチ/リア18インチのホイール径が装着されている。

ドゥカティ デザートXドゥカティ デザートX

このカテゴリーのモデルが例外なくそうであるように、シート高は875mmと決して低くはない。ただし、ローシートやローサスペンションがオプション設定されるとのことなので、体格や足着き性の問題はある程度、カバーしてくれそうだ。一方、装備重量は223kgとのことなので、排気量と装備を踏まえると軽量に仕立てられていると言っていい。

さて、このモデルで最もグッとくるポイントは、オプションで用意されているサブ燃料タンクだろう。タンデムシートの脇に装着できるそれは8リットルの容量があり、航続距離を150km延長することが可能だ。メインの燃料タンク(21リットル)の残量が一定レベルに達すると、スイッチひとつでサブタンクの燃料を移せる機能性もさることながら、なにより雰囲気がラリーマシンそのものであり、こうしたギミックに多くのライダーが心くすぐられるに違いない。

ドゥカティ デザートXドゥカティ デザートX

デザイナーのジェレミー・ファラウドは、「デザートXの美しいスタイルは、“ダカリアン”(パリ・ダカールラリーの挑戦者)へのオマージュと、モダンなルック&フィールを組み合わせることによって実現している」と語っている通り、そこにはアドベンチャーバイクとしての高い資質のみならず、冒険へのロマンが込められているのだ。

イタリアンブランド同士で巻き起こる因縁の覇権争い

ところで今、ちょっとした覇権争いが巻き起こっている。2021年のEICMAでMVアグスタが発表したアドベンチャーモデル「5.5」(554cc水冷並列2気筒)と「9.5」(931cc水冷並列3気筒)との因縁がそれだ。

MVアグスタ 9.5MVアグスタ 9.5

既述の通り、ドゥカティはかつてカジバの傘下だったわけだが、90年代にそこから離脱。実はそれと前後してやはり傘下にあったのが、MVアグスタである。その後紆余曲折あって、カジバの名は消滅。新生MVアグスタに吸収される形で現在に至るわけだが、ドゥカティのデザートXにも、MVアグスタの2台にもカジバ・エレファントの面影が色濃く投影されているところがユニークだ。

そのため、「どっちが本家で、どっちが元祖なのか」といったちょっとした論争が双方のファン同士で巻き起こっているものの、ここはそうした歴史的背景も含めて楽しみたいところ。いずれにしても魅力的なスタイリングを持っていることには変わりなく、これからユーザーになるファンにとっては選択肢が増えたことを意味する。

ドゥカティ デザートXドゥカティ デザートX

デザートXの価格は、193万9000円になることが決まっており、日本への導入は2022年の第3四半期(7~9月)になる予定だ。

《伊丹孝裕》

モーターサイクルジャーナリスト 伊丹孝裕

モーターサイクルジャーナリスト 1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

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